てくてくわくわく 街道ウォーク

週末の東海道てくてく歩きのブログです!

肘頭骨折 術後104日目 Kさんのこと

今日は週に一度の趣味の活動の日です。

趣味の活動というと、モヤモヤしてわかりにくいので、もう少し具体的にいうと、市民合唱団です。高校生のときに合唱部に入って以来、ゆるく合唱にかかわってン十年。

 この市民合唱団には、参加してかれこれ7年くらいかな。練習期間は7月から12月。年末の演奏会が終わると解散。年毎に募集があるというのが、拘束感がなく気に入っています。取り組む曲は、クラシックのみ。有名なところでは第九とかモーツァルトのレクイエムとか。市民オーケストラとの共演がお約束です。私は不器用なので、歌って踊るコーラスは苦手です。だから、そういう意味でも、気に入っています。素人の集まりですが、プロの指導者のもとでの練習ですので、迷走しないのもいい。

 

 さて、毎年の募集で結成されると書きましたが、リピーターがとても多いのも特徴です。本番が終わると、また来年と言って別れる場面も見受けられます。

 こうしてリピートしているうちに、自然に親しくなったのがKさんでした。

 Kさんは、私の母と同じ昭和14年生まれ、80歳です。とても元気な方で、いつも背中がシャキーン、お話も楽しい。どうしたらそんなに元気でいられるの?と聞いたら、しっかりご飯を食べること、肩まわしなど、体をこまめに動かすこと(ストレッチですって!)だと教えてくださいました。「結婚はしたことがないの。気がついたら、してなかった。あなたのように、子どもを育ててみるのもやってみたかったわ。」と言われたのが印象的でした。でも、だからと言って、淋しいとか、そういう感じではなくて、カトリック系の養護施設の寮母さんだったそうで、子どもたちはたくさんいるのよとも、話してくださいました。

 毎年、この時期になると、シスター直伝のレシピで、子どもたちのためにシュトーレンをたくさんたくさん焼いたのですって。懐かしそうに話してくださいました。私も、Kさんのシュトーレン、食べてみたいなー。

 

 昨年の演奏会のあとも、「来年も会いましょうね」と言われ、さよならしました。だから、今年はちょっとパスしようかなと、チラリとよぎるも(今年は職場が異動したりで、なんやかんやと落ち着かなかったので)、Kさんの顔が浮かんで申し込んだのでした。

 

 Kさんと再会して喜んだのも束の間、今年のKさんは、なんだかちょっと調子が悪そう。「お腹の調子が悪いの」とおっしゃいます。20年ほど前に大腸がんの手術をしたことがあって、普通の人よりちょっと腸が短いのですって。心なしか、口数も少ない。大丈夫? ときどき、練習をお休みすることも。それでも、練習に来ると元気になるから、がんばると、おっしゃっていたのですが、今度は私が骨折して入院してしまいました。

 練習を一ヶ月やすむことになったのですが、その間もチラチラしたのは、Kさんの顔です。黙っていては心配をかけるよねと思い、病院から電話しました。Kさんは、「絶対なにかよくないことが起きていると思っていた。でも、大丈夫。必ずよくなるから、演奏会に出よう。」と。

 骨折して腕が曲がらず、楽譜を持つのもできそうにありません。それに何より疲れてしまって。もう、今年はやめようかなと、本気で考えていたのですが、Kさんにそう言われては。私よりもたぶん具合が悪いのに練習に来ているのだもの。ここは力を振り絞ってがんばるかと考え直したのでした。ところが。

 Kさんは、どんどん調子悪くなっていくのです。「家にいるとトイレにばかり行ってしまうけれど、ここに来れば不思議と大丈夫なの。」と言いますが、大丈夫? 無理しないでとはいいましたが、それ以上は踏み込めません。自分の親なら、「病院に行って」と強く言ってしまうのですが。

 Kさんと親しいもう一人のAさんという人が、(その人は私よりかなり年長の方です)、「病院に行かないの?」と言ったら、すごく困った顔をして悲しそうに「入院はいや」。

 わからなくはありません。入院はいやですとも。自分の自由でなくなるのですもの。それに入院すると、余計病人ぽくなっちゃったりするでしょ。病人として扱われると、病人になっちゃう。できることもできなくなっちゃう。そういう不安がよぎるのは、すごくわかる。でも、心配です、Kさん。

 そんなある練習日、kさんは、練習中にお腹の調子が悪くなって、席を離れたんです。「ここに来れば大丈夫」という法則が崩れてしまったんですね。

 次の練習のときに、Kさんの姿はありませんでした。Aさんが「Kさんは、入院することになったのよ」と教えてくださいました。

 入院は嫌だと言ってたけれど、やっぱりちゃんと診てもらった方がいいです。入院ときいて、安心しました。大腸がんなんだそうです。でも、大腸がんは、悪いところを取れば、完治も望めるらしいとAさん。病気に負けないで、また来年、一緒に練習しましょうね。

 

 これから、練習に向かいます。Kさんの快復を祈りながら、今回は本番に望みます。