今週のお題「ゲン担ぎ」
それは今からン十年前の2月1日の朝でした。中学受験の当日に、母はカツ丼のお弁当を包みながら私に言ったのです。
「人を押しのけて勝とうとする人には、なってほしくないの。でも、これは勝たなければ。」
いつもはたいへんおおらかな母でした。それだけに、「ひえっ」と思ったことを、まるで昨日のことのように思い出します。子どもの頃の思い出の中で、そこだけ切り取ったように、すごーくすごーく怖い場面です。なんでだろう? 親の本音を見たからかな?
そんなことがあったせいか、私は我が子の受験に、カツ丼にはこだわりませんでした。「何が食べたい? 何でも作ってあげるよ。」とリクエストを取りますと、次女は「ハムカツがいいな」と言いました。「朝から揚げ物かぁ。めんど」と思いましたが、聞いてしまった手前、頑張りました。息子は「テンションが上がるから唐揚げにして」と言いました。ハイハイ、テンション大事ね。長女は「なんでもいいよ」と遠慮したので、こっそりお饅頭をしのばせましたら、「うわっ、ありがとう!」とメールが来ました。
カツ丼じゃないけれども、私も子どもに何かやってあげずにはいられなかったのは、自分の母親と同じです。
受験が近づくと、キットカット(「きっと勝つ」という、あれです。)やら、カール(「うか~る」とかいうパッケージの)やらをついつい買ってきてしまったバカな母親です。こんなことでしか、応援できないもんね、と言い訳しながら。母親のゲン担ぎ、我が子も内心怖かったかも。「ごめんね」とこの頃思います。
ところで、あのン十年前の中学受験は、母親の念力が通じたのか、めでたく合格しました。今でも忘れません。夕方、掲示板で見つけた受験番号は「748」でした。
その6年後の大学の受験の時です。とある大学の受験番号は「6748」だったのですが、受験票を見た父が言ったのです。「ぼくの大学の受験番号は74番だったな。74なんて、いいことナシかよ、やだなとおもったけど、ちゃんと受かった。」
7と4が含まれているから縁起がいいというわけですね。父親なりのゲン担ぎ。そう言えば中学受験も「748」で受かったよねと、私もゲンを担いでみました。
もっとも第一志望の大学の受験番号は「204」。こちらに関しては「にっこり(2) わらって(0 輪だから)よろこんだ(4)」と語呂合わせしてみたのですが、見事散りました・・・ チャレンジ校だった「6748」の大学に入学することになったのです。
だから、私のラッキーナンバーは7と4です。今でも、例えばロッカーとか駐輪場とかの番号を選ぶときは、74とか47とか28(4×7)にすることが多いです。「あれ、どこに置いたっけ?」と探すことがないし、何となく縁起もいいから。日常のプチ・ゲン担ぎ。
最近、旅先の神社などでお守りを求めることが多くなりました。「無病息災」「健康長寿」「足腰丈夫」「ボケ封じ」「交通安全」などなど・・・。親にです。特に「足腰丈夫」は、時々足が痛いと言う母に、「交通安全」は80歳を過ぎても自転車でスイミングスクールに通う父に。
年をとった両親の健康は、祈ることくらいしかできない部分も。親にゲンを担がれていたのが、いつの間にかゲンを担ぐ側になっている!
どんなに科学が進歩しても、人工知能が正確に占ってくれるようになっても、人はゲン担ぎをやめないでしょう。担ぐ・担がれることで生まれる気持ちが、優しいから。
受験にカツ丼、やっぱり、ありかな?