次回ウォーク「国府津→小田原」での浮世絵スポットは、酒匂川。広重さんの「東海道五十三次」(保栄堂版)で描かれています。
まず、画をアップしますね。
酒匂川については、前回のブログにも書きましたが、小田原宿に入るまえに越さなければならない大きな川でした。
酒匂川を渡るうえでの最大の問題は、江戸幕府の防衛上の理由から、橋が架かっていなければ、渡し舟もなかったことです。旅人は、川越人足(かわごしにんそく)に賃金を払って川を渡りました。さて、どうやって渡ったのでしょう?
手段はひとつではありません。この画では、様々な渡り方が描かれていて、なかなか面白いです。ちょっと拡大してみてみましょう。
手前に肩車されている人がいますが、これが一番リーズナブル。一般の旅人はおそらくこの方法を取ったのではないでしょうか。
向こう岸にまさに到着しようとしている人もいます。手すりがついてないこのタイプのものは平蓮台(ひられんだい)です。川の中程にも、もうひとつ、こちらに向かってくる平蓮台があります。ただの肩車よりも、すこし余計にお金を払わないといけませんね。ちょっと懐に余裕がある旅人はこちら。
ひときわ目立つのが、駕籠を乗せた蓮台です。12人もの人足で担がれています。きっと偉い人がのっているのでしょう。先ほどの肩車されている2人は、この駕籠に乗っている武士の槍持ちとお付きの人です。
対岸では、駕籠に乗った人が順番を待っていて、その横では、川からあがった人足が、体を温めながら(?)休憩中です。
背後の平たい岩のような青いものは蛇篭(じゃかご)と言って、中に石を詰めた籠で、護岸工事に用いられていたそうです。
さらに背後に目を転じると、箱根の山が。墨色、青、赤茶色に塗り分けられていて、鮮やかさに魅かれます。でもなんだか険しそうで、これから待ち受けている箱根の山越えを考えると、身が引き締まります。
そしてやっぱり、もう一度、川渡りの人たちに、視線が戻ってしまいます。小さく描かれているけれど、目が吸い寄せられるというか・・・
水の流れを気にしながら、お互いに声を掛け合って、あっちだこっちだと行き来する人足たち。裸の上半身からは湯気が立っているかのような熱気を感じます。体をはったお仕事、ご苦労様。
きっと広重さんも、この働く男たちを、一番描きたかったんじゃないかな?
いつものことながら、庶民や働く人に対する広重さんの温かいまなざしを感じます。
ここまで、読んでくださってありがとうございました。
また、訪ねてくださると幸いです。