今週のお題「表彰状」
「表彰状」と言えば、やっぱり「ヒョー、ショー、ジョウ!」でしょ。
といっても、ある年代以上の人にしかわかりませんね。というか、50代(?)以上ならば、「あー、はいはい、あれね。」とすぐわかる・・・(たぶん)
子どもの頃、父が相撲好きだったので、千秋楽は必ずテレビがついていて、優勝の行方をかたずをのんで見守ったものです。そしてそのあとのお楽しみが「授与式」。優勝力士が、俵とか豪華な大きなトロフィーとか、様々なものを受け取るのを見るのは、わくわくしました。「次は何が出てくるんだろう?」って。ガラスのトロフィーなんか、きれいだったなあ。
でも、何といっても一番のお目当ては、中継が終わりに近づいたころに行われるパン・アメリカン航空によるトロフィーの授与でした。羽織袴のいでたちの小柄な外国人の男の人が土俵に上がって、声高らかに「ヒョー、ショー、ジョウ!」と読み上げると、それだけで会場にわっと歓声が上がります。これだけでも面白いのですが、ここから先に起きることを思っての歓声です。
外国の方らしい独特のイントネーションの日本語がまず面白いです。「アーナーターは、ショーワ! ロクジューーネン・・・」 文字にするとうまく伝わらないですね。間の取り方が絶妙なんです。いつも同じ調子ではなくて、ちょっとずつバリエーションが変わります。「アーナーターは」というところが「アンタは!」になったり。場所によって方言が混ざったり。大阪場所のときは「そやから」、九州場所の時は「そげなわけで」。極めつけは、トロフィーを渡すとき。つばさの付いた金の地球儀のトロフィーなんですが、重くてなかなか持ち上げることができなくて、やっと抱え上げたかと思ったら転んでしまったりします。大きな力士が手を貸して起こしてあげる場面があったりすると、また歓声が上がります。このあたり、お約束みたいになっているんだけれど、期待を裏切らないところがいいんです。
NHKも心得ていて、だいたいこれが終わると中継も終わり。「あー、面白かった」って言いながらテレビを消したのでした。
表情一つ動かさず、至極まじめに「ヒョー、ショー、ジョウ!」から転ぶまで、やってくれたパン・アメリカン航空(「パンナメーリカン!」という発音がかっこよくて、小学生の私も名前を覚えました)。お客さんも、お茶の間でテレビを見ている人も、毎回繰り返される一部始終を、一緒になって笑い転げた「ヒョー、ショー、ジョウ!」。お笑コントにも負けない面白さでした。昭和だなあ。
え? 何が昭和かって? 思うに、その時しか見られないお約束のコントをみんながテレビの前で今か今かと待っていて、一緒に笑うところかな。そこがYouTubeで拡散したピコ太郎さんとは違う。(ピコ太郎さんはもちろん面白いけれど) 昭和はみんなで一緒に見て笑う。しかもお約束の流れ。いたってシンプルなんです。懐かしいな。
「ヒョー、ショー、ジョウ!」がピンとこない世代の方、それこそYouTubeにも上がっていますので、ぜひご覧ください。げらげら笑うお客さんとは対照的に、表情を崩さずまじめに聞き入っている千代の富士もうつっています。でも、もしかしたら、笑いをかみ殺していたのかもしれませんね。
パン・アメリカン航空の倒産で、パンナム杯の授与もなくなりました。「ヒョー、ショー、ジョウ!」のおじさんは、実はとても偉い方(パン・アメリカン航空の極東支配人 デビッド・ジョーンズさん)で日本語ペラペラだったんだそうです。日本人の笑いを取るために、毎回、あれこれ筋書きを考えていたんですね! すごい。
デビッド・ジョーンズさんは会社の倒産でアメリカに帰国し、2005年に亡くなっています。千秋楽のお約束で日本のお茶の間を笑わせてくださった天国のデビッド・ジョーンズさんに、「感謝状」を贈りたいと思います。いや、「感謝状」では雰囲気が出ませんね。やっぱり「ヒョー、ショー、ジョウ!」でしょ。
「アナタは、ニッポンとニッポンの相撲を愛し、ニッポン中を、笑いに包んでくださいました! よって、アナタに、ヒョー、ショー、ジョウ!を贈ります。」