てくてくわくわく 街道ウォーク

週末の東海道てくてく歩きのブログです!

肘頭骨折 術後149日目 患者として応援したい人

今週のお題「応援」

 

 リハビリの先生を、応援したいです。

 肘頭骨折の手術後、ギブスでぐるぐる巻きで何もできなかったとき、リハビリの先生は救世主でした。執刀医の先生には手術後二度ほど会っただけ、院長先生も、巡回はされるけれど、二言三言かわすと風のように去って行かれます。看護師さんは親身に話を聞いてくださいますが、具体的な細かい相談になると、「リハビリの先生に伺うといいですよ。」と。

 そんな状況下でいよいよリハビリの先生に対面したときには、一筋の光を見たような気持ちでした。当然ですが、風のように去っていくことはありません。数十分の間、マッサージをしながら、じっくり私の話を聞いてくださり、疑問や不安に丁寧に答えてくださいました。それに、先生の手の温かかったこと。まさに「手当」。

 

 リハビリの先生を信じ、頼り、停滞期を経てトンネルを抜けるように快復に向かったことを思い返すにつけ、感謝の念に堪えません。どんなに心強かったことか。

 と、こんなふうに書きますと、さぞかしベテランの理学療法士さんかと思われるでしょうが、私のリハビリの先生は超若者です。我が家の次女と、同学年です。それがお互いにわかってからは、患者でありながら「おかん」的な会話をかわすこともあります。例えば「娘が、一人暮らしをすると急に言い出したんですよねー。正直、寂しいです。」と私が言えば、「職場まで遠いから、僕も本当は一人暮らしをしたいけれど、なかなか。親と暮らすのは楽な部分もありますからね。」

 

 そんな会話の延長で、ある時先生から、「この仕事(理学療法士)、将来はけっして明るくないんですよね。先細りです。」という言葉が。「え? まさか。医療関係の仕事は、これからますます需要があるんじゃないですか?」

 ところがそうでもないのですって。まず、不安なのはAIに仕事を奪われるのではないかということ。理学療法士さんは、使えない筋肉はどこか分析し、それを改善するにはどのようなリハビリをしていけばいいか治療計画を立てるのですが、「そんなのは、これからはどんどんAIがやってしまいますから。」

 AIに仕事を奪われるのではというのは、あらゆる仕事に共通して広がる不安です。私は学校司書をしていますが、数年前に学校司書の配置を増やそうということが提案されたとき、某政党の方が「学校司書の仕事はAIで代替できる」と発言し、関係者に衝撃が広がりました。

 私は、司書の仕事がすべてAIにとってかわられるとは思っていませんが、AIにはできないこと(人間にしかできないこと)を見極めてきちんとした仕事をしなくてはと思っています。そうした努力をしないで、「心外だ」とか「仕事をなくさないで」とか言うのは、ちょっと違うんじゃないかなと思います。

 こんなふうにあらゆる分野で議論を呼ぶ「人間かAIか」。医療分野においては、「AIより人間でしょ?」という印象を持っていたのですが、そうでもないのですね。考えてみれば「分析」や「計画立案」は、人工知能の得意とすることです。

 

 また、これは一般論ですが、理学療法士の方の職場内での微妙な立場。「医師→看護師→理学療法士」というヒエラルキーの構造が、どうやらあるらしい。たぶん、収入面においても。

「国家資格者だし、開業とかできるのでは?」と、無知な私は言ってしまったことがあります。本当に、恥かしい。

 理学療法士さんは、病院内で施術をする人です。開業はできません。つまりどこかの医療機関に雇われて(サラリーマンとして)、ずっと仕事をしていくことになります。

「整骨院を開業するのは、柔道整復師の資格を持っている人たちです。僕たちは、できないんですよ。」

「この仕事が一生の仕事としてどうなんだろうと、考えてしまうこともあります。」

 えっ、そんな。私たち患者は、こんなに頼っているのに。

 

 若者が、現在就いている職業の未来を「先細り」だと感じてしまう状況に、「おかん」的な私としては心が痛みます。

 私のような年代の者が、「今の仕事では老後が不安だ」というのは、ある程度仕方のない部分もあるかと思います。でも、これから20年30年働いて、高齢化社会を支えてくれる世代の人たちが、自分の仕事を先細りだと感じてしまうなんて。しかも、ライバルがAIだなんて。こうした状況を作り出したのは、私たち親世代にも、責任がありますね。

 

 業界のことはよくわからないので、言及は控えますが、患者の立場で感想を言うと、理学療法士さんの仕事がすべてAIに奪われることは絶対にないです。

 分析して計画するのはAIだとしても、それを実行に移すかどうか判断するのは人間です。的確な判断ができるかどうかに、人としての力量が問われているのではないでしょうか。これもどの分野でも共通のことですね。

 それから、AIは、施術しながら私と話をしてくれません。

「次女が、とうとう、家を出てしまうんですよね。」

「ソウデスカ。ソレハ、ヨカッタデスネ」

「寂しいです。」

「サビシイデスカ。ソレハ、ヨクナイデスネ」

 こんな会話でどうします? AIは、私の心の内を汲んでくれません。なんだか星新一さんのショートショートのロボットみたい。

 そしてなにより、私は先生の手の温かさを忘れません。未来のAI理学療法士の手は合金でしょうか? 温かモードとか、選べるのかしら? 夏はひんやりモードにできたりして?

 でもね、紅白歌合戦で観た「人工知能の美空ひばり」が「何か変」だったように、どんなに頑張っても、AIは人の手にはならないでしょう。AIに「手当」はできない。

 

 そう考えますと、AIに仕事を奪われる心配よりも、むしろ職場に置ける立場の問題の方が、一般的に根が深いような気がしてしまいます。理学療法士さんが大いに夢を語れるように、世の中が変わっていってほしいなあと思う「おかん」です。

 私は、患者を支えてくださる若い理学療法士さんをはじめ、世の中で働く若者の皆様方を、応援しています。

 

 あくまでも、一患者としての感想です。的外れな部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 

 今日もお訪ねくださり、ありがとうございました。