てくてくわくわく 街道ウォーク

週末の東海道てくてく歩きのブログです!

『東海道中膝栗毛』 現代文でささっと読んでみた

 『21世紀版少年少女古典文学館20 東海道中膝栗毛』(村松友視 講談社)を読んでみました。

 小学校高学年から中学生くらいまでが対象でしょうか。とはいえ、300ページ弱、それなりに時間がかかりました。(3時間くらい)

 

よかったこと

 まじめな脚注や写真・図がページ上部に盛り込まれ、きちんと読むと大人でもかなりお勉強できる一方、随所に差し込まれた南伸坊さんの、とぼけたイラストのページが、お勉強から解放してくれてほっとします。お急ぎの方は、脚注をすっとばして、それこそささーっと読めますよ。

 

ちょっと・・・なこと

 そもそもダイジェスト版なので、仕方ないと思いますが、抜けがあるのはちょっと残念。何を残すか編集段階で試行錯誤があったことでしょう。「あれ、ここ、抜けちゃったの?」と思うところも。

 もう一つひっかかったことは、どこからまでが十返舎一九の『東海道中膝栗毛』で、どこからがこの本の加筆部分なのか、わかりにくいということ。

物語としての味わいを失わないよう、筆者の手による省略、加筆をした。また、わかりやすさを増すよう、筆者の自由な解釈をつけ加えた現代文とした。

 このような断り書きが最初にあるのですが、かなり自由な付け加えがあります。

 一例を挙げれば、舞阪から新居まで乗合船で渡るくだりがあるのですが、船の中にヘビを持ち込んだと言い張る男がいて、ちょっとした騒動になります。持ち込んだはずのヘビがいなくなったというので、他のお客さんたちはそれはどんなへびなのか?とか、ホントに生きたへびなのか?と男を問い詰めますが、男は「レッド、スネーク、カモン!」とどこ吹く風。

 えっっ ちょっと待って! 「レッド、スネーク、カモン!」って、それはいくらなんでも変ですよ。一応、江戸時代の珍道中ってことになってるし。

(騒動に気が付いた弥次さん・喜多さんが)

「さあいってみろ、いったいなにがなくなったんだ。」

「へびが一ぴき。」

「へ・・・・・。」

「へびが一ぴき、なくなったんで。」

「へ、へ、へびっていうと、あの、くねくねぬるぬるのへびのことかい。」

「そういうこと。」

「で、そのへびは生きてんのかね?」

「もちろん、ピンピン生きておりますが、どこへいきましたやら・・・・・・。」

 おやじは、口笛をふきながらそこかしこに目をくばり、

「レッド、スネーク、カモン!」

などといっている。

そのあたりにへびがまぎれこんでいるかもしれないと思うと、寝ていた人も起きてしまい、船の上で右往左往しはじめた。

  この部分、原文は次のようになっています。(『東海道中膝栗毛岩波文庫

弥二「ハテいゝではすまねへ。なにが見へやせん。

おやぢ「ハアそんならいゝますべい。みんな、びっくりさつしやりますな

北八「ハゝゝゝゝゝ、おめへがものをなくしたとつて、だれがびつくりするものだ

弥二「なにが見へやせん

おやぢ「アイ蛇が一疋なくなり申た

北八「ヤアヤアとんだことをいふ人だ。へびたアなんのへびだ

おやぢ「なんべいとつて、いきた蛇でござるハ

のり合「ヤアヤアヤア

弥二「イヤきさまも、とんだものをもつてきた。へびをマアなんにしよふとおもつて

北八「こいつはきみのわるい。ここらにはいぬか

トたちさはげば、せんちうみなみなそうだちにたちさわぎ

  うーん、かなり自由な創作。「筆者の自由な解釈をつけ加えた現代文」とのお断り通り、これは現代語訳ではなかったのですね。認識が間違っていたようです。

 

総評

 現代語訳ではありません。創作のかなり入ったダイジェスト版と考えると納得。次から次へと起きる失敗に懲りず、駄洒落の嵐で旅を続ける名コンビの面白さは、すごくよく伝わる本なので、子ども用としては◎です。

 小学生の子どもがいたら、親子で楽しむのもいいかもしれない。(お母さんかお父さんがお子さんに読んであげてください。) 江戸時代を身近に感じるかも。

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