てくてくわくわく 街道ウォーク

晴歩雨読。週末の東海道てくてく歩き&ときどき読書のブログです!

門井慶喜『銀河鉄道の父』

 街道ウォークとときどき読書のブログです。

 日本橋を出発して週末に少しずつ進めてきた東海道ウォーク。箱根の関所に到達してまずは一区切り。日帰りするには少々無理がある距離になってきました。これまでのようにちょくちょく気軽に行くことはできないかも・・・

 

 ということでしばらく読書ブログにお付き合いいただくことが増えるかもしれません。今回は、『銀河鉄道の父』(門井慶喜 講談社)です。

 第158回直木賞受賞作品です。またまた話題作を取り上げてしまいました・・・ というのも、私は本に関連する仕事をしていまして、やはり話題作は読んでおかないとモグリになってしまう気がするので。せっかく読んだので感想をつぶやいています。

 

 門井慶喜さんの作品については以前当ブログで『家康江戸を建てる』を話題にしたことがありました。

 

www.lupinus-shiroyagi.com

  このとき、文章が不自然(体言止めが多いなど)なことと、史実を基にした創作であるにもかかわらず参考文献が挙げられていないことを、残念だと書かせていただきました(すみません)。今回もこれに関しては同様の感想です。

 ただ、宮沢賢治ではなく、賢治の父の心情にスポットを当てて(後半、賢治の側に立って書かれた記述も混在し、「あれ?」と思ったりもしたのですが)いる点がこれまでになく新しく、とても面白かったです。

 宮沢賢治と言えば、小学校の教科書で童話が取り上げられ、誰しも一度はその作品に出会っているのではないかと思われるほど有名です。しかしながら、生前はほとんど評価されなかったこと、詩人・作家であると同時に農業者として生きていたことなど、いわゆる明治の文豪とは異なる位置にいたこともしばしば語られているので、知っている人は多いことでしょう。また、私は子どもの頃、教科書ではもちろん自分で本を借りたりもして、宮沢賢治の童話を読む機会がありましたが、優しい語り口なのにどこか説教臭く、「好きになれないなあ・・・」ともやもやとした感想を抱いた記憶があります。理想を語り、諭される感じになじめなかったというか。立派過ぎるような感じ。

 でも、今回、この『銀河鉄道の父』を読んで、ずいぶん印象が変わりました。ここでの賢治は、世間知らずのボンボンで、学校は出たものの今でいうとニート。学業をあきらめ家族と家業のためにひたすら働いてきた父親に内心反発しつつ、正面切っては強く出ることはできない。あるあるな感じに親近感すら覚えてしまいました。そして父・政次郎は、最初は神童かと言われたにもかかわらず徐々に学業の精彩を欠き、心配の尽きない我が子を前に人知れずおろおろする大甘ぶり。なんか平成の父親みたい。

 本当に賢治って、そして賢治のお父さんってこんな感じだったの? 読み終わった後、とにかくすごく気になって、賢治について書かれた本を図書館で借りてきてしまいました。『図説 宮沢賢治』(上田哲・関山房兵・大矢邦宣・池野正樹/著 河出書房新社 1996刊)です。たまたま目についたのを借りただけなのですが、写真が豊富で、4人の著者がそれぞれの専門分野からの視点・アプローチで賢治についてわかりやすく丁寧に検証していて、とてもよかったです。人を、一面で見ることは乱暴。いい面もあれば、それが悪い面に見えることもある。心に葛藤を抱え、自分の人生もどうしていいかわからなかった賢治だからこそ、あのような澄んだ世界を自分の理想の着地点として作っていったのかもしれないなあと、今さらながら思いました。それと、子どもの頃、どうにも好きになれなかった賢治の童話の説教臭さも少しだけ合点がいきました。悩める自らを戒めるような気持ちもあったのだろうし、何より幼いころっから家族で信仰していた浄土真宗の影響が大いにあったことでしょう。(後に賢治は日蓮宗に改宗します。実はキリスト教の影響も少なからず受けていたようです。いずれにせよ宗教というものに魅かれる土壌があったのでしょうね。) この解説本を読むと、そんなこんなが見えてきます。

 

 で、『銀河鉄道の父』ですが、これがすべてではないけれど、賢治についてこういう捉え方もあるのだなあということで、評価できるし、その面白さが直木賞受賞につながったのではないかと思いました。ただ、やはり、参考資料が挙げてあったらよかったのにと残念です。種明かしはしないのかもしれないけれど、読者としては興味があるし、そうした記載があったほうがかえって信頼できるかも。

 事実と違うなんてことは言いません。だってこれは創作なのだから。創作部分にこそ価値があるのだから。「史実(事実)を基にした創作」の難しさを感じた一冊でした。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもの。それを超えるのはとても大変ですね。

 

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