てくてくわくわく 街道ウォーク

晴歩雨読。週末の東海道てくてく歩き&ときどき読書のブログです!

佐藤正午『月の満ち欠け』

 今回の本は、『月の満ち欠け』(佐藤正午 岩波書店)です。

 

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 第157回直木賞受賞作です。知り合いの「ぜひ読んでほしい!!」という強い薦めで手に取りました。

 知り合いによれば、自分にとってのツボで、直球で心に刺さったんだそうです。輪廻転生を描いた不思議なお話だというので、「村上春樹さんの『IQ84』とか『海辺のカフカ』の世界みたいな?」と聞いたら、「いやいや、もっと柔らかいよ。」と・・・。

 300ページ超の割と分厚い本だったので、一見敷居が高かったのですが、読み始めたら止まらなくて。確かにやわらかい。直木賞らしいかも。2日で読んでしまいました。

 なぜ、こんなにもハイペースで読んでしまったかというと、何より話の全体を知ってすっきりしたかったからかな、と思います。いろいろな人の話が出てくるのですが、最初はバラバラだったそれぞれの人の人生が、どこかで重なりあっているのだということに気が付き始め、これがどう一つの物語になるのだろうと気になって読み進み、最後にピタリとはまった時の爽快感がたまりません。

 

 内容をちょっとだけ紹介しましょう。(基本、ネタバレはありません。)

 物語は、東京ステーションホテルのカフェで、初老の男性・小山内堅(つよし)が母娘の二人連れと対面する場面から始まります。テーブルの向かいに座る、この日初対面の7歳の少女の名前は「緑坂るり」。小山内を見つめる子どもらしからぬ冷めた視線、大人の女性のような話し方、まるで小山内の過去を知っているような話しぶりに、背筋が寒くなる小山内でした。何となく予想していた展開ではあるのですが。

 

 それというのも、小山内にはかつて妻子がいました。娘の名前は「瑠璃」。くしくも「緑坂るり」と同じです。

 妻は大学の後輩でした。同じサークルで話すようになり、社会人時代の遠距離恋愛を経て結婚しました。決断力があり忍耐強く賢い妻でした。

 娘の瑠璃についていえば、7歳の時に、不思議な出来事がありました。1週間にわたり高熱が続いたあと、おかしな言動をするようになったのです。始まりは「アキラくん」。大切にしているくまのぬいぐるみを突然「アキラくん」と呼び始めたのですが、「アキラくん」ってだれ? なんで「アキラくん」という名前なの? 

 そのうち、知るはずのない昔の歌謡曲を口ずさむようになり、挙句の果てには家出をして補導されてしまいます。行先は高田馬場のビデオ屋さん。どうしても行きたい場所だったらしいのですが、幼い女の子が行きたがるような場所ではありません。まるで誰かが乗り移ったかのよう。大人の女性のような、遠くを見る冷めた視線。(そう、「緑坂るり」と同じです。)不可解なことが続いた後、なぜかこれ以上の進展はなく、何事もなかったかのように日常に戻ったのですが・・・

 10年後、妻と娘の瑠璃は、交通事故で突然この世を去りました。

 これが第一話。

 

 第二話の主人公は、「三角(みすみ)哲彦」です。実は、三角哲彦は冒頭のカフェで、小山内や緑川親子と待ちあわせをしているのですが、第一話では、まだ待ち合わせ場所に現れていません。第二話は三角哲彦の大学時代の話です。この先はネタバレに近くなってしまうので、ここでやめておきますが、三角哲彦は、この物語のキーマンです。

 

 小山内の目の前の少女・「るり」は、娘の「瑠璃」の生まれ変わりなのでしょうか? それにしては、話はもっと込み入っていそう。三話、四話と読み進むうちに、だんだん一つの線が見えてきます。

 登場人物たちの人生は、幸せであるとは言い難く、運命の残酷の理不尽さに、悲しくなってしまいますが、それを超越するサプライズがラストにあります。

 輪廻転生を描いた本だと最初に紹介しましたが、この本のテーマはずばり「愛」だと思います。

 不思議な愛のストーリーに浸ってみたい方、ぜひご一読を。

 

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。また訪問してくださると嬉しいです。

 次回から、また「街道ウォーク」の記事に戻ります。