てくてくわくわく 街道ウォーク

晴歩雨読。週末の東海道てくてく歩き&ときどき読書のブログです!

 浮世絵ウォーク 神奈川①

 毎日毎日、よく降る雨です。秋の長雨ですかねぇ・・・ 明日は神奈川→保土ケ谷を予定していたのですが、あきらめます。雨の中を歩くのは、みじめですからね。

 そこで、街道歩きの計画や報告の日々はちょっとお休みして、浮世絵についてあれこれ調べてみようと思い立ちました。(このブログ、どんどん間口が広がって、大丈夫かしら? 案ずるより産むがやすし。がんばってみまーす!)

 

 さて、前回、「まちなみ」の「記憶」をとどめるために写真で「記録」していきたいと書きましたが、写真に代わる江戸時代の記録の手段といえば浮世絵でしょう。宿場町の様子は、たくさんの浮世絵画家により描かれていて、なかなか興味深いのですがとても検証しきれません。ここは焦点を絞って、ウォークをしていきながら、葛飾北斎の「富嶽三十六景」と歌川広重の「東海道五十三次」に描かれてる風景を鑑賞していきたいと思います。どうぞお付き合いください。

 で、今回は、神奈川宿エリアです。

 

葛飾北斎富嶽三十六景」神奈川沖浪裏

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 北斎の浮世絵の中でも特に有名で絶大な人気がある「神奈川沖浪裏」。けれども、神奈川宿内の東海道を歩いても、海が見える場所はありません。江戸時代は海に面していた宿場町の海岸線が、今ではすっかり変わってしまったのです。「もしかしたら北斎はこの辺りから海を眺めたのかな?」とか、「いやいや、この辺りかな?」とか想像するのも楽しいですが、この絵には、場所がどこかということを超越した迫力がありますね。

 迫力の秘密は、構図。北斎の視点がとても低い位置にあって、波の高さが強調されているのです。西欧画法を身につけた北斎の努力の結果だともいわれています。白と藍の濃淡でシンプルに彩色された水の表現も、大胆さに拍車をかけています。波間には大自然を前にひれ伏す船頭たち。その向こうにぽっかりと空いた空間に端然とした姿を見せる富士山は、逆巻く海とは対照的に、静謐です。西欧風かと思いきや、この調和には日本的な精神が感じられます。

 この作品は、北斎が70歳過ぎてからのものですが、とてもエネルギッシュな意欲作です。そういう意味でも、場所の特定云々は問題ではなく、創作された風景画と考えると腑に落ちるのです。

 なお、「神奈川沖浪裏」は、国境を越えて愛されたことでも知られています。オランダの画家ゴッホは、弟テオに宛てた手紙で激賞し、フランスの作曲家ドビュッシーは、この図を仕事場に掲げインスピレーションを得て、交響曲『海』を作曲したそうです。また、イギリスの詩人ハーバート・リード(1893~1968)は、著書『芸術の意味』の中で、「感情移入」の説明にこの図を利用しています。ヨーロッパ近代の合理主義的視覚とは別の切り口が西欧人に与えた影響は、大変大きかったようです。

 

【参考資料】

『千変万化に描く北斎富嶽三十六景』(大久保純一 小学館

『浮世絵のことば案内』(田辺昌子 小学館

『教科書に出てくる日本の画家① 近世の画家』(監修 糸井邦夫 汐文社

『日本の名画 11葛飾北斎』(辻惟雄 編 講談)*

『名宝日本の美術 23北斎・広重』(監修 太田博太郎 ほか 小学館)*

『原色日本の美術 17浮世絵』(菊地貞夫 小学館)*

 

 『千変万化に描く北斎富嶽三十六景』以外は、すべて図書館の蔵書です。*の図書は、出版年は古いですが貴重な資料です。重くて収納が大変だし、値段も結構します。個人で買うのはハードルが高そう。図書館、大いに利用すべし!